「日本人同士の子供でも、アメリカで生まれたらアメリカ人(出生地主義)」というシンプルなルールはよく知られていますよね。
でもその逆、アメリカ人の親を持っていても、アメリカ国外で生まれた場合には国籍の取得に制限がかかることはあまり知られていないかもしれません。
アメリカ人の親を持つ子供がアメリカで生まれた場合は出生地主義で自動的にアメリカ人になるんですが、海外生まれの場合アメリカ国籍を持つにはその資格があるかどうかを証明する必要が出てきます。
この記事では、出生による米国籍取得の「血統主義」の部分、海外生まれのアメリカ人の子供が国籍を継承するための条件を詳しく見ていきたいと思います!
えっ、日本人だと海外で生まれた子供でも日本国籍を継承できるよね。アメリカは違うの?
うん、親が子供の出生前にアメリカに住んでいたかどうかがポイントになるよ。
特に片親がアメリカ人の場合は条件が厳しくなるので注意!
血統主義とは?
まずはちょっとおさらい。
出生による国籍取得(子供が生まれた時点で自動的に得る国籍)には2つの考え方があります。
- 出生地主義(その国で生まれたらその国の国籍になる(アメリカ、カナダなど))
- 血統主義(その国の国籍を持った親から生まれた場合にその国の国籍になる。日本含む大体の国はこれ)
つまり、生まれた場所を重視するのか、誰から生まれたかを重視するのかの違いだね!
アメリカは出生地主義が有名でそのイメージが強いと思いますが、もちろんアメリカ人の子供もアメリカ人、という血統主義も並行して使われています。
ただ、出生地主義で言い方は悪いけどホイホイ国籍を与えているので、
一応アメリカ国籍は持ってるけど、住んだこともなければ英語も話せないし文化もてんでなじみがないんだよね…。
↑なんて「アメリカ人」も結構な数がいます!
そんな本国と関係の薄いアメリカ人の子供にも無制限に国籍を与えていくのはちょっと問題…ということで血統主義に制限を設けているのかなと思います。
ここからは、アメリカ国外で生まれた子供のうち、
①両親がアメリカ人
②片親がアメリカ人
の二つのケースで、国籍をもらえる条件を見ていくよー!
「両親がアメリカ人」の場合の国籍取得条件
両親がアメリカ人の場合は割と緩くて、条件はシンプルです。
- 子供の出生前に
- 両親のどちらかが
- アメリカに居住していたらOK(年数制限なし)
「年数制限なし」ってどういうこと?
下で説明するけど、片親がアメリカ人の場合は5年の制限が付くんだ。
それがないってことだよ。
出生前ってことは…
生まれてからずっと国外で過ごしたアメリカ人が、妊娠発覚してから
「子供に国籍を与えたい!」
と思ってちょっとだけアメリカに住んだりしたケースでもOKってこと?
それはまた極端な…!(笑)
でもわざわざ「出生前」「年数制限なし」と但し書きがある以上、理論上は多分OKなんだと思うよ!
駆け込み滞在した人ももしかしたらいるかもしれないね。
「片親がアメリカ人」の場合の国籍取得条件
片親のみがアメリカ人の場合は、少し条件が厳しくなります。
- 子供の出生前に
- アメリカ人の親が
- 合計で5年間、アメリカに居住していたらOK
※ 5年のうち、2年は14歳以後である必要あり
ここでは便宜上勝手に「5年2年ルール」と呼んでおきますが、ちょっとややこしいですよね。
日米ハーフでありそうな感じの例を下にいくつか挙げてみるので、「これはOKかな?NGかな?」と考えてみてください!
- 日本で生まれてすぐ渡米、小6までアメリカに住んでいたけど、以降はずっと日本
- ずっと日本育ちだけど、大人になってからアメリカに移住して5年以上住んでいる
- 幼少期に4年アメリカに住んでいて、大学の時1年アメリカに留学、その後日本で就職
正解は…
- NG(トータル12年も住んでいましたが、14歳以後が0年なので足りません)
- OK(幼少期に住んでなくても大丈夫です)
- NG(14歳以後が1年足りないので5年2年ルール満たせずです)
なんとなくこの「5年2年ルール」掴めましたでしょうか?
個人的には1のケースは国籍あげてもいいんじゃ?と思いますが、現行ルールはこんな感じです。
ある程度分別のある年齢の時にアメリカで過ごしたことがあるかがポイントなんでしょうか…?
ちなみに、子供の国籍を申請する時に親の細かい滞在歴やその証明を提出する必要がありますので覚悟しておいてください!笑
私が滞在歴の表を作った時は米パスポートに出入国スタンプがないものがほとんどだったので、日付を確認するのになかなか骨が折れました…。
幸い日本のパスポートがちゃんとしてるので照らし合わせてなんとかなりました。
サンキュー日本の出入国管理局!
※日米の二重国籍保持者がで日米間だけ移動していると、日本の出入国時は日本のパスポート(そちらにスタンプ押される)なのでアメリカのパスポートが真っ白状態になります!
余談ですが2022年あたりから外国人にもスタンプ廃止の方向みたいですね。オンラインで確認の流れになるのかな…
「居住」の定義は?(旅行での滞在もOK)
「居住」というワードがちょっと誤解を生みやすいので補足しておきますね。
語感的に「住所を持ってちゃんと住んでいないとだめなのかな?」と思ってしまいますが、実は「旅行などで滞在した期間」もカウントできます!
大使館の日本語ページでは少し迷ったんですが、英語版のページを見るとはっきり
Physical Presence is the actual time when the parent was physically present in the United States, not simply as a resident.
U.S. EMBASSY & CONSULATES IN JAPAN
「単に居住者としてではなく、物理的にアメリカにいた期間のこと」と書いてあるんですね。
この文は、例えば住所だけアメリカに置いてるけど他の国に滞在していたような期間はカウントから除きますよって趣旨なんですが、逆も当てはまるかと思います。
例えばアメリカの親族の家に毎年定期的に長期間遊びにいったりしていると、積もり積もって1、2年分くらいになる人も結構いますよね!
念のため在日米国領事館にも質問してみたのですが、
The five-year requirement for your physical presence in the U.S. does not distinguish between the time you spent in the U.S. as a resident or a non-resident. Please list all the periods of your physical presence on the U.S. in the application form.
米国領事館の回答(2024/06/10)
とのことで、居住者としての登録がどうとか関係なく、とにかくアメリカ領土内にいた時間がカウント対象になるようです。
番外編:2017年6月11日以前に生まれた「非嫡出子」の場合
※非嫡出子(ひちゃくしゅつし)は、結婚していない両親から生まれた子供のことです。
2017年6月12日以降は両親の婚姻状況に関わらず上と同じルールが適用されるようになったのですが、それ以前は母親から子供に米国籍を継承する場合の条件が別にありました。
(父親から継承する場合は上に書いた条件と一緒です。)
出生届は18歳になる前なら出せるのでまだ該当される方がこの記事を見る可能性があり、念のためこちらの条件も載せておきますね!
2017年6月11日以前に生まれた非嫡出子に母親から米国籍を継承するための条件:
母親が子供の出生前にアメリカに1年以上まとまって居住したことがある。
母親から継承する場合は、両親ともにアメリカ人かどうかは関係なくこの条件です。
なんで分けてたんでしょうね?
このルールが不公平ではないか、と裁判が行われ、2017年6月12日以降生まれの子供は両親の結婚状況や父母に関係なく、現行の条件で統一されることになりました。
まとめ
- アメリカは血統主義も採用しているけれど、国外で生まれた子供が米国籍取得するのに以下の条件がある:
- 両親ともにアメリカ人:両親のどちらかが子の出生前にアメリカに滞在したことがある
- 片親がアメリカ人:アメリカ人の親が子の出生前に「5年2年ルール」を満たす
- 「居住」の定義:法的に「居住者」かどうかは関係なく、物理的にアメリカにいた期間のこと
- 2017年6月11日以前に生まれた非嫡出子には別のルールが適応されるので注意
ここだけわかっておけば、子供の国籍取得準備は半分終わったようなもの!
半分は言い過ぎだけど一番わかりにくい部分なのは確かにゃ
将来子供を意識しているカップルは、今のうちから居住のリスト作っておくのをお勧めします。
思い出しながら整理するの、なかなか大変です…!
参考:
ACQUISITION OF AMERICAN CITIZENSHIP(米国大使館HP)
How do I complete the Physical Presence section in eCRBA?(米国大使館HP)
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