以前二重国籍が違法かどうかについて記事を書いたのですが、そこで出生による重国籍者が日本国籍を選択しても、他の国籍については
離脱の努力をしてください
ということで強制力がない話をしました。
日本が他国の国籍を放棄させることはその国への内政干渉になるので出来ないという背景があるんですが、
じゃぁ離脱の努力ってどれくらい頑張るべきなんだ?
って思いますよね。
私は成人してから自分に米国籍があることが発覚してパスポート取得の流れになったんですが、もうずっと日本人として生きてきたし当時英語も大して話せなかったし、日本国籍を失うのが怖くていろいろ調べました。
その中で米国籍の離脱についても調べたんですが、噂通りなかなかのハードルの高さでした!
記事タイトルの質問に答えるならば、「難しいというか、負担が大き過ぎてできればやりたくない」。
この記事では「どのくらい大変なのよ?」と気になった方向けに、アメリカ国籍の離脱にかかるコストや手間などを紹介していきますね!
米国籍の離脱(Renunciation of U.S. Nationality)について
「アメリカ人ではなくなる」手続きである米国籍の離脱ですが、これが成立するには「デメリットなどすべて理解した上で自分の意思によるもの」という点がとても重視されます。
米国籍離脱の前に注意する点として、米国国務省のHPでは以下のポイントが挙げられています。
- 米国籍を離脱したことで無国籍にならないか
- 国籍離脱は税や軍事的な義務、犯罪を裁かれることから逃れるものにはならない
- 未成年や知的障害のある子供の国籍を親や後見人が放棄することはできない
- 一度放棄したら元には戻らない(18歳未満除く)
これらの注意点を理解した上で、やっぱり米国籍は要らない!という意思を持った人が離脱の手続きに進めるというわけですね。
ちなみに米国籍の離脱は、米国内ではできません。
日本で米国籍の離脱をするプロセス
大まかな流れ
国籍離脱の手続きは、在日米国大使館(または領事館)に予約を取るところから始まります。
日本における米国籍離脱の手続きの流れ
(※手続きに移行する前に…「米国籍離脱による自分への影響をしっかり調べて理解する」「米国での納税義務をちゃんと果たしているか確認、整理」を忘れずに)
- 最寄りの米国大使館もしくは領事館に国籍離脱手続きがしたい、と予約を取る
- 必要書類の準備(国籍の証明、質問票、離脱意思を確認する用の署名などがあります)
- 大使館などに出向き、なぜ離脱したいのか説明したり、離脱したらどうなるのかの説明を受けるための面接、および申請費用の支払い
- 離脱の意思が確認されると、大使館もしくは領事館から米国ワシントンDCにある国務省に書類を送り、許可が下りるのを待つ
- 承認されると米国からCertificate of Loss of Nationality (CLN)が送られてくるので、それを受け取り大事に保管
- 国籍離脱が成立した年の米国税申告書を提出(国外転出税(下記参照)が課された場合はその支払いも)
結構ステップ多いなー…
これ全部やったら大体どれくらい時間かかるんだろう?
かかる時間
米国籍離脱の手続きは一度完了してしまうと元には戻せないので、とても慎重に決定されるようです。
面接でかなり熱心に引き留められたって話も良く聞くし、そもそも書類をアメリカに送って承認を待つだけでも数か月かかることも。
最初に税の事を確認することから離脱してからの最後の税申告書の準備まで考えると、全てすっきり片付くのに数か月~下手すると1年くらいはかかりそうな印象…
パッと決めてパッと終わる!ってわけにはいかなそうだね。
あとは、費用がどれくらいかかるのか気になる…!
必要な費用
必要な費用は大きく分けて二種類。
証明書発行及び申請費用
まず必ず支払う必要のある申請料は$2,350、2023年11月時点の為替で日本円にして35万越えです。
円安も相まって、た、高い…!
国外転出税(Expatriation Tax)
さらに主に富裕層が対象となる「国外転出税(Expatriation Tax)※」があります。
※出国税(Exit Tax)とも呼ばれることも。
国籍離脱時点の財産をすべて売却したと仮定して、それに対する税がかかるシステムです。
IRSのサイトによると、対象者は
- 国籍離脱直前の5年間の平均年収が約170,000ドル以上(この額はインフレ率などで毎年変動するようです)
- 離脱時点の純資産が200万ドル以上
- 国籍離脱直前の5年間の納税義務を果たしていることがForm8854で証明できない
の3パターン。
特に二番目。
「富裕層じゃないし自分には関係ないやー」なんて思ってしまいがちですが…
不動産などを含む全財産が対象なので、持ち家の値段とかも含めると実は対象で、思いがけない金額を払うことになったりも!
納税手続き漏れも対象になってしまうようなので気を付けたいですね。
海外在住者など納税義務があったことを知らない人向けに救済措置もあるので、米国籍離脱希望の場合は申請前に専門家に相談するのを強くおすすめします!
米国籍離脱は不可能ではないけど、負担が大きい
この通り時間と手間とお金のかかる米国籍離脱。
日本国籍の選択をしている限り放棄しようがしまいが日本国籍維持には関係ないですし、一般人でわざわざアメリカ国籍を放棄したいという人はあまりいないのが現状かなと思います。
心情的にはどっちつかずに見える重国籍者への風当たりが強いのも分かるのですが、国によっては国籍を手放すのもなかなか負担のかかるプロセスであることが理解されると、重国籍者としては助かるなぁと思います。
理由があって離脱を希望している場合も、メリットデメリットよく考えた上で費用など覚悟しつつ(笑)慎重に決めてくださいね!
参考リンク:
Renunciation of U.S. Nationality Abroad (U.S. Department of State)
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